猛虎過江

2013.02.09 Saturday

上稲子の旧跡(遺跡)巡り

（門野からの富士山）

芝川郷土史研究会・新年研修会は、冨士宮市上稲子の
旧跡巡りということで久しぶりに参加しました。
上稲子地区は、天子ヶ岳(1316m)を源とし、入山部落及び
西沢部落を通過する二筋の支流が、落合部落で合流し
稲子川本流となり上稲子部落の中央を南下し、下稲子に於いて
富士川に注いでいます。
今回、訪れた旧跡と称する個所は、稲子川を中心として
東西に点在する五部落の旧跡・遺跡を視て回りました。

宮地「城山(じょうやま)」山頂付近周辺に稲子城の跡がある

稲子城城主を祭った”おじぶつさん”五輪ノ塔が一部あり

宮地：ユートリオ内「宇登坂の双体道祖神(相合傘に男女神像)」

宮地；ユートリオ内「金毘羅神(薬師如来の眷属、航海安全守護神)」

池ノ谷・通称、日影やのカーブ「牛頭・馬頭双体道祖神」

稲子地区は、鎌倉時代、富士川の合戦で敗走した平家の残党が
稲子川を遡上し、各部落に隠れるようにして移り住んだと
伝えられています。
富士川の合戦で、源氏の源頼朝・甲斐の武田の混成軍と
水鳥の飛び立つ音に驚いて、源氏混成軍と戦わずして
敗走した平家の武将平維盛を祭った墓などは、全国にかなり
点在するといわれております。
西ヶ谷戸の維盛の墓も伝承ものであり真相は不明也。
今回、研修会で特に印象的であった「六地蔵」「上稲子八幡宮」に
ついて、少し書き留めておきたいと思います。

地蔵堂「六地蔵石憧(せきどう)」

昔から、上稲子から山梨の身延へ行くには、地蔵堂～大田和～
石神峠～山梨の天子湖(柿本、上佐野)を通って身延に抜ける
道として、旅人の往来がかなりあったそうです。
近年は、落合～石神峠～上佐野まで林道が開通し、石神峠から
白水山への登山道として登山客に利用されています。
地蔵堂から石神峠までの道は、ほとんど利用されていないので
廃道に近い状態です。
地蔵堂に鎮座する六地蔵の云われについては、「芝川町誌」を
参考にして、書きたいと思います。
昔、大田和部落の住人（佐野氏）は、自分の子供が、１０歳位で
早死してしまう事をひどく嘆き悲しみ、生まれてくる子供が、
なんとか丈夫に育つようにと、地蔵堂の部落地先に六地蔵を
建立し祭ったと云い伝えられています。
六地蔵というと、一般的には、六体の像が一列に並んでいる
情景を想像しますが、ここの六地蔵は、単体の石碑であり
石質の傘の下に六角柱があり、柱の各面には、六地蔵が
一体づつ浮彫されていたらしいが、脆い石のため、風雨に
曝されたため、正確な六地蔵の姿は、失われつつあります。
六地蔵石憧としては、かなり珍しい形状であるので、このまま
朽ち果ててしまう事が寂しいです。

六地蔵石憧

六地蔵（六道能化の地蔵）の概要（参考）
１、金剛願地蔵は、地獄へ行って人を救済する。左手に閻魔帳、
　　右手に成弁印を結ぶ。
２．金剛宝地蔵は、餓鬼を救済する。左手に宝珠、右手に
　　甘露印を結ぶ。
３．金剛悲地蔵は、畜生道で活躍する。左手に錫杖、右手に
　　引接の印を結ぶ。
４．金剛憧地蔵は、修羅道を救済する。左手に金剛憧、右手に
　　施無喪の印を結ぶ。
５．放光玉地蔵は、人間世界で活躍する地蔵。左手に錫杖、右手に
　　真願の印を結ぶ。
６．預天賀地蔵は、天人を教化する。左手に如意珠、右手に
　　説法印を結ぶ。

上稲子八幡宮（氏神さん）

新稲子川温泉「ユートリオ」から天子ヶ岳方向に遠望すると
砕石の砂場の先に、お椀を伏せたような城山(稲子城跡)が見えます。
この城山の南側斜面の入り口に鎮座するのが「上稲子八幡宮」です。
稲子川に架かる吊り橋を渡り、左側折れ、沢の小橋を渡る。
御影石の鳥居をくぐり抜け、急峻な石段を４０段登り詰めると、
上稲子八幡宮の本殿に到着し、拝殿から参拝する。

上稲子八幡宮に参拝

名　称：　上稲子八幡宮
所在地：　冨士宮市上稲子字宮地３２番地
創　建：　不詳
縁　起：　安土桃山時代の初年：天正元年（１５７３年）
　　　　　現本殿地先の山中にあった社を慶長１４年(1609年)遷し
　　　　　幾たびの建替えを経て、安政４年(1857年）現在の本殿が、
　　　　　再建される（口伝）　
祭　神：　応神天皇、仁徳天皇、神功皇后の三神
旧社格：　旧村格（明治８年２月８日）
建　築：　本殿、拝殿、木造・瓦葺、入母屋造
厨　子：　京風厨子(130H)(100W)、入母屋造り、黒色漆塗り
　　　　　随所に金箔を押した三間社、嘉永２年(1849年)
　　　　　初午の日、京都より購入
鳥　居：　大輪白影石製鳥居(3m)　
灯　篭：　御影石（１対）弘化２年(1844年)銘刻の石灯篭
神　事：　富士山本宮冨士宮浅間大社神職
祈　願：　五穀豊穣、安寧秩序、家内安全等
祭典日：　7月中旬、１０月中旬
管理者：　上稲子区
道　順：　JR身延線稲子駅下車、市営バス：日向橋BS下車
　　　　　（稲子駅から約5.5Km、ユートリオから約５００m)

上稲子八幡宮本殿

上稲子八幡宮（氏神さん）は、昭和３０年代は、地元宮地部落の
住人が、氏子総代として祀っていたが、次第に社屋維持管理等が
難しくなってきて、上稲子全体（上稲子区）で祀ることとなり
上稲子区長、町内会長、組長を中心として維持管理と祭事をとり
行っています。
７月中旬に境内を、当番組による草刈り清掃の後、簡単に直会が
行われる。
１０月の秋の祭典は、当番組が、祭典の段取りを執り行い、
本殿の厨子が開帳され、冨士宮浅間大社の神主より神事が
執り行われ祭りが挙行されます。
神事が終わり、本殿内で直会がおこなわれます。
又、同日、山神社の祭典も簡単に行われます。
（山神社は、以前は、八幡宮の境内社として合祀されていたが
　現在は、山の神総社として西ヶ谷戸に移され祀られている）
厨子の開帳は、原則として祭りの日、以外は行わない。
１２月の大晦日、２３時頃、上稲子区の役員、各組長他
上稲子の住人が集まり、年越し～初詣の会が行われる。
平成３年、本殿裏の大木を伐採中に誤って、本殿の屋根を
著しく毀損し、氏子総代により大規模に屋根を修理する。
その際、厨子も文化財建造物保存技術員の指導により
制作当初の手法により修復されました。
八幡宮の厨子は、旧芝川町指定文化財（建造物）に指定され
ています。

参考資料
芝川町誌（冨士郡芝川町、昭和４８年）
上稲子の民俗(早稲田大学第二文学部民俗調査団
１９９８年度調査報告書）
本調査９８年７月、補充調査２月、早大第二文学部岩田講師を
リーダーとして、２０名の学生が、上稲子の住民、関係者、
約６０名余宅の聞き取り調査を泊まり込みで実施し、八幡宮、
山神社、稲荷神社等の祭りにも参席、各部落の名前、屋号、
各部落の祭祀、民間信仰等、詳細に調査活動を実施。
約２５年前、存命していた明治、大正生まれの年長者の方から
昔からの言い伝えを聴きだしており、これ等は、貴重な証言として
調査書に反映されており大変に貴重な資料です。

不肖：驫鍾馗 | 芝川郷土史研究會 | comments(0) | -

上稲子の旧跡(遺跡)巡り

Post a comment