猛虎過江

2011.09.24 Saturday

台風により、陸の孤島となる

9月21日に、静岡県の浜松に上陸した、台風15号は、
富士宮地区も、猛烈な暴風雨にさらされ、市内全域で、
河川が増水、氾濫し、猛烈な風と大雨で、屋外の木々や
建物のトタンなど風で飛ばされ、屋外にある軽いものは
舞い上がり、屋外に出るには、とても危険な状態であった。

特に、旧芝川町内は、道路が、河川の増水で一部陥没して
通行止めになりました。
ＪＲ身延線は、倒木、法面崩壊で、西富士宮駅～甲府駅まで
運行中止し、さらに停電等で、”ライフ　ライン”が
ズタズタの状態であった。

２１日、午後4時ころ、富士宮市内の中心地から自宅に
車を走らせたが、道路の法面が一部崩壊、倒木やゴミが
道路を塞ぎ、辛うじて、通行できる状態であった。
小生は、台風が来ると、4輪駆動の軽トラックのほうが
乗用車より機動力があるので使用しているので、比較的
スムーズに走行できました。

その間、自宅へドコモの携帯電話で、女房に稲子地区の状況を
逐一確認する。
区長からも携帯にかかってきたので、小生の持っている情報の
伝達と、区長がつかんでいる情報を確認する。

市の広報無線は、台風の時は、音なしの状態であり、市内の
肝心な情報は、採取できないようである。
行政が、あてにならない状況時は、地域の区長（自主防災兼務）
及び地元消防団の組織が、リーダー核にならないとどうにも
ならない状態に突入します。
小生としても、とりあえず自宅に戻り、部落の各戸の人命確認、
部落内の被害の状況確認等をし、それから区の組織の一員として
行動しなければならないです。

稲子地区に入る道路は、国道469号の柚野地区から桜峠を経て
入るルートと、身延線稲子駅から稲子川沿いを北上するルートの
2ルートしかなく、自宅に帰る人は、このルートを利用するしか
ないです。
小生が、最初、柚野方面から入ろうとしたが、柚野小学校から
森林部落の最後の人家から１００Ｍ進んだところで、市役所の
職員が来ており、法面崩壊及び倒木で、通行できないので
これから通行止めにするようであった。

仕方がないので、もう一方ルートの芝川駅方面へ移動し、
柚野の鳥並地区に車を走らせたが、柚野の消防団の
ポンプ車に遭遇し、Ｂ＆Ｇ迄、通行できるか
確認しあったが、不可能とのことで、別の道を迂回して
なんとか長貫地先の、内房大橋の信号迄、いったが
富士川が増水して、いつもの所で、案の定、道路に水が
集まって、車の高さまでなっており、車が、１台、
動けなくなって立ち往生していた。

地元の知り合いや消防団ＯＢが、3～4人いたので、
お互いに情報を交換する。
いつもの箇所が通行できないと、考えられるルートは、
芝川駅近くから、楠金地区の部落を通過して、山越えして
上長貫にでて、下稲子部落にはいるか, 山梨の52号線を
通行して十島駅近くから葛谷峠をこえ、下稲子に到達する
ルートしかないが、両方とも、台風時には、過去の経験から
通行できないことは、学習しています。

その間、携帯に、いろいろと、稲子地区の最新状況が入電、
情報を整理したところ、18時時点で、桜峠ルートは、
大小10か所、法面決壊、倒木で、通行止め、稲子駅から
上稲子までの道路は、稲子川が氾濫し,幹線道路を侵食、
3か所で道路陥没で、通行止め。
稲子川に掛かっている主要な橋（3か所）には、上流の
杉、檜、雑木の大木が、川に流れ込み、橋を塞いで、
橋は、流失し、車が、通行できる状態ではない。

上稲子地区は、とうとう、どこからも車では、立ち入る事の
できない、所謂”陸の孤島状態”になってしまいました。
稲子地区の顔見知りの人達と、いろいろ立話をして出た結論は、
ここで待っていても通行できる可能性は見いだせないので、即
親戚なり知人宅に避難し、宿泊をして、明日、復旧工事の状況を
見守るしかないという事に相成りました。
皆と別れ、その場を後にしました。

小生は、富士宮の市街地に住む、姉の家に泊まりました。
稲子地区は、夜になっても停電状態であり、辛うじて
携帯がつかえる状態であった。
それも、携帯が、だんだん繋がらない状況になっていき
情報が、取れない状態に陥っていきました。

翌、22日は、昼ごろ、桜峠付近の道路の復旧が、土建屋の
徹夜作業の有難い努力により、車がなんとか通行できる
ようになり、自宅に帰ることができました。
まず、部落内の各戸を回って、安否確認、被害状況の確認と
地域の情報収集する。
部落の水道が、水源付近で、山崩れで、水道管が切断され
断水に近い状態である。
部落の組合員を非常招集し、3人で、飲み水を確保するため
復旧工事を行うことにした。

元、水道屋の家に行って、接合管（ジョイント）を借用し
歩いて、水源地近くの現場に行き、夕方までには、
突貫工事で、仮復旧させた。
市の水道でなく、部落の住民のみ使用する簡易水道の為、
市では、何もやってくれないので、昔から、冬場の凍結期
台風の時期は、何度も、部落内で、水道復旧工事を
しているので慣れたもんです。

水道工事が、とりあえず終了したので、区民館で、
陣頭指揮をとっている区長ほか役員と合流して、今後の
行動を、話し合い協議する。

23日、8時、区民館に、区の役員および関係する消防団が
集合し、災害復旧工事応援という事で、各方面と連携調整
しながら地域の災害復旧のサポートをすることになりました。
区の役員で、一見、若者もどきの体力のある精鋭作業部隊員と
消防団の精鋭とその他、有志、合計１０人ほど選抜し、
入山地区に孤立している家へ行くことになりました。
各自、軽ラックに、必要と思われる個人の道具や装備品を
積載し、地蔵堂部落まで行くことにする。

その先は、橋が、崩落しているので、背負子に道具や、燃料等、
括り付けて徒歩で目的地へいくしか他に、方法はありません。
飛図温泉手前、中橋、その先、天神橋は、倒壊しているので
各自、背負子を背負い、ハシゴを上り下りし、落合部落まで
荒れ狂った道路を慎重に行軍する。

それから先は、道路が陥没した個所があり、約１５０Ｍ位
山の斜面の木々をチェーンソーでなぎ倒し、迂回路（小道）を
即席で設置し、昼前には、入山の元民宿の家に到達しました。
小生は、重油２０ＫＬ入りポリタンクを誰も背負わないので、
昔、登山やキャンプで使用していた、アルミ製のパイプ背負子に
括り付けて、4時間ほど背負ったが、久しぶりに重い荷物を
背負ったので肩に食い込んで、身体が潰れそうです。

小生が思うに、消防の本所のレスキュウ隊は、こうゆう時こそ
日頃から訓練をして、陸の孤島に渡河、登山して徒歩で來るのが
本来の役務のではないか。
小生のでた大学の山岳部、ワンゲル部、探検部の現役のほうが
リーダーの指揮のもと果敢に現場へ乗り込んでくると思う。
暴風、寒さ、熱さなどものともせず、昔の軍隊のごとく
行動してくれると断言します。
レスキュウ隊が、３０Ｋ位の個人装備、共同装備をして
３０００Ｍ級の山岳地帯で、雪の行軍、暴雨風雨のなか
５泊６日位の合宿を体験して、自分の体力、精神力の限界を
見る位、自分を追い込んだことがあるか聞いてみたいです。
こんなことを書く小生も、学生時代、体験しているので
言い切るのです。

午後は、食糧、救急物資を、孤立した部落へ、やはり各自
徒歩で、背負子に背負って配りました。
それから、夕方まで、床下浸水の家のヘドロ除去作業の為、
出向いて、それぞれ作業を行い、各自、ヘトヘトであった。
今後、地域の災害復旧の応援に出れる人は、協力していき
少しでも、従来の生活に戻れる事を、願う次第です。

台風襲来、災害復旧の補助及び,どうでもよい個人的行動記録を、
クドクドと書きとどめてみました。
災害時、行政は、指揮者不在、担当責任者不明の為、情報は、
個人で集めて、素早く対応し行動しなければならないです。

加筆.

小生が、地元消防団で活動していたとき、台風災害、人探し
山狩りなど、火災出動以外の活動で思ったことは、
詰所に装備されている大小の草刈り鎌が、さび付いて刃が、
欠けてとんでいるので、緊急に使用するとき、使い物に
なりません。
平団員に研がせた所、鎌を研いだ経験がないらしく、見ていて
おそろしくて、砥石の持ち方、刃の研ぎ方を教えてやったことが
ありました。
鎌の研ぎ方が出来なければ、鎌を使用することはできません。

今回、背負子に物資を括って背負い上げる作業は、
昔の人たち（小生位の年齢以上の年代者）は、山仕事、
植林の大鎌による下刈り、苗木を山に背負い上げた経験は、
少なからずあるので、背負子にいろんな形のものを括り付ける
人が、かなり存在していました。
しかし、背負子で、ものを担いだ経験のない人は、背負子の
紐2本を、どのように結んだらよいか見当がつきません。
重い荷物を背負ったことのない人は、１キロ平地を歩いただけで
くたばってしまいます。

小生は、今回、少し細めの使いやすいロープ１０Ｍを個人的に
持参しました。
なぜ持参したのか。

それは、山岳でのザイルワーク経験から習性で無意識に
持参したかもしれないが、ロープは、災害時、いろんな
応用ができる、途轍もなく優れものです。
前段で、背負子の紐の事を書いたが、今回、みんなが
持参した、各農家にある、木製の背負子は、年代物であり
紐も切れてしまうほど、４０年間以上、使用されていない
骨董品であり、小生が持参したロープが、替えようとし
使用できます。
梯子が、掛かっているところは、荷物を吊すことが可能です。
さらに、渡河するとき、木を切るとき、その他、いろんな
人命救助の場面で、今回、大活躍してくれました。
但し、ロープの各種、結び方が出来ない人は、論外です。

非常災害時、背負子の重要性と紐の結び方をひっくるめて
後輩のリーダーに伝授・継承していくことが重要である事を
付け加えておきます。
消防団にも、ひもの結び方、学習してもらいたいです。

小生は、昨年まで、ボーイスカウトの指導者をやっていたが、
在団中は、スカウトの子供たちに、紐の結び方とその目的を、
徹底的に教えたつもりです。
そのスカウトは、もう青年の歳になっているので、災害時、
紐の結び方が、直接的に役にたっているか，過大評価は
できませんが、少なからず、そのきっかけ、非常時の
トラブルの解決の糸口になるのではないかと思います。

蛇足、
今回、行政の災害本部から支給されたロープは、小生が好きな
黄色と黒模様のナイロン製”トラロープ”ですが、使用範囲が
限定され、ないよりかましという程度の認識です。
非常用柔らかいロープも、支給品リストに入れるという
現場の状況を考えた発想は出てこないのかな。
消防本部の本職が、いるからいいのかな。
但し、”陸に孤島”になったら、消防の職員は、危険を冒してまで
現地へ徒歩で行くなんて言うマニュアルは、想定してないのですかな。
過去、何回も、台風で、災害をくらった反省で、少しは危機管理
意識が木端役人に芽生えているのか訊いてみたい。
地元にいる消防団及び消防団ＯＢ（区、区役員等）の活躍には
感謝したいが、特に、消防団は保障されているが、区の構成員が
事故のあったとき、包括的保険にかけるとか施策がなされているか
一考すべきである。

了